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インタビュー
三時 眞貴子
准教授
専門分野:西洋教育史(イギリス)
趣味:お料理・温泉
好きなもの:近着物・四季を感じること・紅茶・プリン・うどん
研究内容

19世紀から20世紀イギリスの極貧児・虐待児・浮浪児のケアと教育、20世紀以降のバイオポリティクスと学校医療、学術知の社会循環(パブリック・ヒストリーとしての教育史)
主な研究論文・著書
三時眞貴子・河合隆平編『教育と医科学の社会史ー「生きること」の序列と支援』(昭和堂、2026年);奥田伸子・三時眞貴子編『近現代の「不自由な」労働者を再考するーイギリスと帝国を中心に』(広島大学出版会、2025年);Makiko SANTOKI, "From being the most vulnerable children to becoming conventional members of society: four cases from Manchester certified industrial schools, c. 1880-1920", HISTORY OF EDUCATION, 50巻, 4号, pp. 536-554, 2021;三時眞貴子『イギリス都市文化と教育ーウォリントン・アカデミーの教育社会史』(昭和堂、2012年)
Q1.現在のご研究テーマと、いま最も関心を寄せている問いについて教えてください。
私の研究の根幹にある問いは、「人はなぜ生きるのか」です。といっても理由を探るというよりは、理由は結局、後付けで、生命として誕生した以上、生きてしまうのだから、自分の人生と向き合って自分がどう生きるかを考えた方が納得できるんじゃないかなという漠然とした考えに基づいています。歴史を紐解くと、教育は時に人々の「生きること」を支えてきましたが、人が「生きること」を阻んだ事例も沢山存在します。要は、誰の「生」を問題にするのか、教育を受けるに「値する」者をどのような基準で選ぶのか、何を教育と呼ぶのかなどによって、教育はさまざまな意味になりすし、機能することになるということです。そのため教育を無条件に「良きもの」とみなすのではなく、教育を「生きること」を支えるものにするためにはどうすればいいのかということを、「生存の教育史」として問い続けています。
Q2.これまでの学習・研究の過程を振り返り、現在の研究分野に至ったきっかけを 教えてください。
卒業論文の時から博士学位論文まで考え続けていたのは、「人はなぜ学校に行かないといけないのか」という疑問でした。それは私が中学生の時に不登校になった経験と、高校生活が打って変わってとても楽しかったというギャップに戸惑ったからでもあります。学校とは何のために行くのか、誰が何のために学校を作ったのか、そういった幾つかの素朴な疑問を抱きつつ、教育学を学ぶ中で、(公教育)学校がなかった時代に人はどうやって学んだのか、その時代は人々は何のために何を学んだのかという問いを持つようになり、公教育制度が開始される前の18世紀イギリスの教育について調べることになりました。その後、子どもを出産するという経験を通して、虐待児や極貧児のケアと教育に関心を持つようになり、テーマが現在のものに展開していきました。
Q3.先生ご自身の立場から見て、教育学(またはご専門分 野)という学問の魅力や意義はどこにあるとお考えですか。
教育学の魅力は、教育が誰もが体験する事象でありつつも、実は知らないことだらけなので、何を学んでも、自分の体験につながる驚きと発見があることかなと思います。教育史は歴史学を研究方法として探求する領域ですが、歴史を紐解くと、さまざまな事象が多角的に解釈可能なので、普遍性ということに懐疑的になります。そのために、物事が起こった文脈を常に考える癖がつきやすいので、証拠や事実に基づいて思考することが好きな人には楽しいんじゃないかなと思います。歴史は文献研究なので、静的な作業と思われがちかもしれませんが、史料を手に入れることが基盤になるので、好奇心と体力を必要とする動的な方法論でもあります。あちこち旅しながら、自分の知りたいことを追求していくので、それもまたそういうことが好きな人には楽しんでもらえるのではないかと思います。
Q4.教育や教職、教育研究に関心をもつ学生に向けて、伝えたいメッセージを教えてください。
教育学は、実際に展開されている教育という営みを理論的に解釈し、新たな教育実践や教育論の考え方を創り出す学問です。大学生は、人生の中で初めて、学問=知的探求にどっぷり浸ることのできる貴重な時間だと思います。ぜひ知的遊戯を楽しんでもらえたらと思います。